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22〜3年前のナガサ

blog07.10nagasao1.jpg
1985年頃製作のナガサ。又鬼山刀と刻印が入る前のモデルである。鞘も現在の物と造りが違っている。研ぎ減りもしているのでかなり細身になってしまった。

ナガサとの出会いは、ボクが20歳頃の時であった。
その頃のボクは社会人になって東京に居た。東京マタギと呼ばれている深瀬信夫氏の「マタギ」を買う前の話なので、1984〜5年である。


渓流釣りキチの叔父と秋田の打当川へ釣りに行ったときに、阿仁のマタギ資料館へ立ち寄った。
その時の館長さんは現役のマタギだった。定かではないが、打当マタギのシカリ鈴木松治氏であったと思われる。
資料館には昔のマタギの装束のマネキンとツキノワグマの剥製が置かれていた。
大きめの秋田犬ほどの熊の剥製には、それほど恐怖感を覚えなかった。
館長さんに「こんなのと山で出あったら危険なんですか?」と訪ねた。
四つん這いのツキノワグマは、それほど大きく感じなかったからそんな質問が出たのだ。

館長さんは「立ち上がれば背丈と同じくらいだ。でも、熊手っていうべ。見で見ろ。この爪で引っかかれれば肉も削がれてしまう。これでやられてしまんだ。」
と答えられた。
その時は「へ〜そうなんだ」という程度しか実感がなかった。
それよりもマタギのマネキンが腰に差していた鉈が気になった。
「これは何処に売っているんですか?」と訪ねた。
館長さんは「荒瀬で売ってる」と教えてくれた。
場所を詳しく聞いて、帰り道に叔父と立ち寄った。

場所はすぐに判った。
マタギ資料館で聞いて寄ったと言うことを伝え、ナガサを見せてもらった。
居られたのは亡くなった西根稔さんだったものか、先代であったかは記憶にない。

岩場を渡るときにナガサを突き立てて支えにしても先が折れないという話や、柄のかしめが絶対にぐらつきないという説明を聞いた。
開いた新聞紙を左手に持ち、ナガサを新聞紙に当てて滑らせる。
ナガサに力を入れなくても滑らせるだけで新聞紙を切り裂く。これで切れ味がでなければ駄目だと仰っていた。

確かその時は二本のナガサを出して来てくれた。刃先を吟味したボクの要望に応えて、回転式の砥石で刃を付けてくれた。
価格は定かではないが、今よりも随分と安かった。

七寸のナガサを購入し、短い盆休みを終えて東京へ戻った。
その年の秋だったと思う。釣り会のメンバー数人で福島へ釣りに行った。
その時同行したのが、その後バリバリの源流マンとして活躍している高野日和氏であった。
彼とは銀座東作で出会い、彼の所属していた「山彦渓流会」にボクも籍を置いた。
そんなこともあり、東京時代にはいつも一緒に釣りへ出かけていた。

その福島釣行の時である。遡行している時に濁りが入ってきて見る見るうちに増水しはじめた。
川の両岸は首の高さほどの土壁なのだが、増水の度に削られているのであろう、木などが全く生えておらず土手にはい上がるのに手がかりが見つからなかった。
足許の流れはすでに真っ茶色で流速が速くなってきている。ぐずぐずしていると危険だ。
「いざとなったらナガサを岩に突き立てて危険な岩場を越える」という話が頭に浮かんだ。
その時は買ったばかりの七寸ナガサを腰に下げていた。土手は土だったのでナガサを突き刺すことができる。
すかさず腰からナガサを外し、土手の上に突き刺した。深く突き刺さったナガサのおかげでしっかりとした手がかりが出来、ようやく土手の上に上がる事ができた。
すぐに、上流に行っていたタカさんも無事に土手を降りてきた。
土手に上がってからは増水は更に激しくなった。きっと源流部で集中豪雨でもあったのだろう。
ナガサのおかげで事なきを得た。
しかし、土手に突き刺した地中には石ころが入っていたのだろう。
刃がこぼれてしまっていた。

東京に帰ってから、荒砥で刃こぼれを直したのだが、幾分刃の幅が細くなってしまった。

その年の秋に深瀬信夫氏の「マタギ鉈」に出会い、それからはナガサの出番が無くなってしまった。

東京から八戸に引っ越すときに、源流マンとして活躍しはじめたタカさんに七寸ナガサを託したのだった。
つい最近なのだが、タカさんのご厚意により再びボクの元に七寸ナガサが戻ってきた。
お返しに、源流に持っていっても邪魔にならないサイズの四寸五分を贈らせてもらうことにした。

実はタカさんのナガサを注文するために荒瀬に立ち寄ったときには四寸五分のフクロナガサガ品切れだった。一週間ほどで出来上がってくると言うことだったので注文をしておいたのだが、そのすぐ後に大型台風が東北北部を襲った。
ナガサの工場も水没し作業の再開もいつ頃になるかというほどの被害であった。つい最近復興第一本目の四寸五分フクロナガサガが高野氏の元へ送られた。

blog07.10nagasa1.jpg
四寸五分と七寸。

ナガサの刃の付け根は直角に立っているので、魚を捌いたりするときに刃のそばまでぎりぎりを持つと、人差し指が刃に触れて危険だった。
深瀬さんがその部分を斜めに削ってくれたので、今ではオリジナルと少し違ってしまっている。

blog07.10.17mark.jpg
二昔前のナガサの刻印と現在の刻印。◯に誠は、先代の西根稔氏の奥様の名前の一字。
  1. 2007/10/20(土) 00:43:59|
  2. 持ち物
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